| 今年、タイガースが優勝したのは、なんといってもやっぱりリーダーでございます。やっぱり強いリーダーがいるということはですね、これは素晴らしいチームが出来るという証明でもあったわけです。星野監督が来たときに、私は一瞬むっとしたんですよね。大体その〜、ライバル関係にあったわけですから、中日と阪神といえどもですね、敵のチームの監督に来てもらって、大将になってもらうなんていうことはですね、これはいよいよ阪神も情けないな、と。まあ、その前の野村さんもいましたけれども、あの人は適当でそれはまあ良かったんですけれども。とにかく、星野さんだけはゆるせんなあ、と、私は個人的に思っておったわけです。私より学年が1期上で、18くらいの時から東京6大学で一緒に野球をやった仲間なんですけれども、ず〜っとライバル関係にありました。それから田渕さんという人が、私よりも1期上で、法政時代から野球を一緒にやって、阪神でもずっと同じだったわけですが、まあ大阪は阪神のシンボルは田渕さんだと。私は、こう思っていたわけですね。だから星野さんの下に田渕を雇いながらですね、あの星野監督に阪神を引っ張っていってもらおうなんていうのは、本当に最初は胸くそ悪くて、あの時、雑誌社と相談して、星野の悪口の本書くかといって、書いて、どういうわけかその原稿が星野に漏れまして、直接星野さんから電話があって、「お前、なんか俺の悪口書くらしいな」と言われて、「とんでもございません」と原稿を隠しまして、こんな情けない男でございます。まあ、そういうパワーというのか、すごいですね。星野さんのパワーというのは、まず中日時代に築いたものもあるんですけども、私はああいうそのう、ある種、政治力のあるパワーの持ち主というのは、この世の中、時々いるんですけれども。まあ野球界においては、この人をおいて他にありません。星野さんが阪神の監督になったとたんに、突然小さいときは阪神ファンだったと言ってしまうほど、素晴らしい方です。これは、まあ政治家向きなんですけども。まず就任したとたんに、自分の後援会作りを、星野仙一後援会作りを、だーっと、この京阪神に作ってですね、まあ多分この近所にもあると思いますが。まず、そういうものを作って、そういうバックをしっかりして、球団と掛け合ってですね、あの渋ちんの阪神の熊さんという、ナベ恒さんと同じくらいのとんちんかんなオーナーなんでありますけれども、このオーナーが大体まあ金を使わないんです。強くしなくても、客が来て儲かると。この、その安い品物を売って、よそよりも利益を上げるというですね、素晴らしい経営者でありますけれども、この人に金を出さして強いチームを作るということは、それはもう大変なことで。で、ただ言ってもOKしないだろうというんで、星野さんはそういう自分の組織を使ってですね、そのバックをちらつかせながら、オーナーに「こういうチームを作りたい」と、「こういう戦力でやったら勝てるんだ」と言って、持っていったんですね。で、最初はうんと言わなかったんです。「そんなにカネは使えん」とオーナーが言ったら、「いや、それは簡単ですよ。そんなにドスンと金使わなくても、いまいる奴を首切れば、浮いた分で選手は取れるじゃないですか。」と言って、24人首切ったんですよ。その首切った奴が私と同期の黒田っていう編成部長なんですけども、ここだけの話なんですけども、これがまた球界のワルと言われていて、このワルをまた上手いこと使うんですね。そういう、そのまあ、いろんなところで適材適所人を使いながらですね、いいアイデアを出しながら、もうなかなかうんと言わなかった、金を出すことをうんと言わなかったオーナーに、やっと金を出させて、そうして金本やら伊良部、下柳といった戦力をどんどん作っていったわけですね。そして、それだけではありません。やはり、星野さんというのは、何がすごいかというと、やっぱり参謀を上手いこと置いているんですね。あの人はベンチの中では、ベンチに入ったときは仕事は怒るだけです。他は何もしません。中日時代なんかは、扇風機をときどき直したり何かしていました。まあとにかくベンチにいくと、むすっとして、で選手がドジ踏むとカッとしてこらっと言って怒ると。それだけが仕事でして、それ以外は誰がやるかといったら、ヘッドコーチがやるわけですね、参謀が。で参謀というのが、嶋野という人でして、これは私がむかし南海ホークスにいるときに、あの江夏豊と交換トレードで阪神タイガースに一緒に行った男なんですけども。彼は、まあ野村野球からずーっと仕込んだ、野球のエキスパートというか、本当にまあよく勉強した人で。非常に参謀として重宝がられた、と。で、これがどういう訳か、星野さんが随分前から、これを使っていたと。阪神の監督になったときも、この嶋野を条件に監督になったわけです。彼が大体サインは全部やるわけですね。だから、星野さんというのは、ランナーが出ていても、どうしていいか、わかんないということが時々あるんですね。「これ、どうするんや」みたいに。今年なんかでも、初戦に巨人と対戦したときにね、急に采配振りたくなって、ピッチャーが、吉野がツーナッシングに追い込んだ時に、7−0で勝っているときに、追い込んだとたんにフッとひらめいて、俺も仕事しなきゃいかんなということで、マウンド行って、「藤川投げろ」と、2−0から投げさせたらそのままガーンとやられて、がたがたになった試合があるんですね。あの時に、やっぱり気がついたんですね。俺がしちゃいかん、と。任すところは、任さないかん、と。そして徹底して、嶋野に任したんです。嶋野という人は、選手と星野監督の間に立つだけではなくてですね、コーチ間の調整にも、非常に睨みの利く男でして。星野さんよりも、もっと強面なんですよ、実は。もう、殴ったり蹴ったりするのが大好きな男でして、最近星野さんがおとなしいもんですから、まあ本当はあの人がやっているんですけども、コーチに小野がいますからね。あと、おしゃべりの達川とかね。しゃべりだしたら止まらない西本とかですね。それから、何言っているか分からないけども、いる田渕さんですとか。とにかく、この人達を上手く調整してですね、選手も常にコーチを見てますから。で、コーチを見て、自分を上手く使っているとか、使ってくれないとか、そういうのを選手は見ているわけですから、そういうときにコーチがとんちんかんなことをやるわけですね。 |