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私の一冊
平成13年2月19日 産経新聞朝刊から
 子どものころから、兄や姉の本に囲まれ、家のごく近くに図書館もあったせいで、読書量は多かった。
  しかし、会社員になるとまとまった時間がとれなくなって、しばらく遠ざかっていた。それが、今のように、活字中毒というか読書依存症になったのは国会議員になってからだ。
地元と東京を新幹線で週に三回も行き来するようになると、カバンに必ず読み終えないだけの本を入れないと、もう落ち着かない。
車中で読むことから、文庫で面白くないとだめ。
だから、今は歴史小説や推理小説が 好きなジャンルだ。
  歴史小説を読むようになったきっかけは司馬遼太郎『梟の城』だった。
年代・場所・人物・出来事はすべて忠実だが、人間関係や人の思いはフィクションを混ぜて生きた「歴史」となっている。だから、家康が天下を取れたのか−とすんなり分かって、触発されて、以後歴史小説も読むようになった。
 なかでも、毎月楽しみに文庫判の配本をもっていたのが、山岡荘八の『徳川家康』。
書き手のエンターテイメントとしての巧みさもさることながら、家康だけでなくて、信長・秀吉から描かれているから主な舞台というか、バイプレイヤー(わき役)の活躍する場所がみなウチの近く(滋賀県近江八幡市生まれ)というのも魅力的。  
  例えば、今すんでいる家(大津市)は旧東海道に面していて、本を読んでいるうちに、「ああ、上洛の時はここを通ったはずだなあ」と。隣町は安土城があったところだし、琵琶湖の反対側には明智光秀がいた。  
  実は、私は学生時代の歴史が一番嫌いだった。無味乾燥にひたすら年号を覚えなくてはいけなくて、何でこんなことを勉強しなくちゃならないんだと思っていた。
  歴史小説を読むようになってみると、教科書でたった一行だったことが、なぜ戦争が起きたのかとか、ある人物がどう生きたか、世の中の移り変わりがどう一人ひとりの人間にかかわったか−などがよくわかることがわかった。もちろん、歴史観は井伊直弼も偉人か悪人か評価がわかれるように、価値観が加わるのでまた、別に考えないといけないだろうが、歴史を学ぶさいにもっと小説を読むことがあってもいいんじゃないかと思う。  そうすれば、もっと楽しいものになるし、活字は何よりテレビとちがって 登場人物の顔からまわりの景色から自由に想像力を働かす余地が残っている。

                         (かわばたたつお)

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